最強の花嫁は最愛の花婿を守る為に牙を剥く
壱のズボンのポケットの中で軽快な音楽が鳴り始めたのは、その時だった。
拘束する理由がなくなった尊を解放し、携帯電話を取り出す。
壱はディスプレイに表示された名前を確認してから、通話ボタンを押した。
「喂、干什么?…等一下。」
「すごーい!周防君、外国語話せるの!?」
壱は女性陣に得意気に笑って見せると、電話を耳に当てたまま立ち上がり、撃沈状態の尊に向かって言った。
「尊、俺行くわ。少し用事ができた。」
そして、釘を刺すように一言。
「分かってると思うが、浮気したらブッ殺すからな。」
「………。」
尊は机に顔を伏せたまま戦慄した。
ままま、まさか、伊藤さんとのデートのことがバレてる…?
恐る恐る顔を上げると、壱はもう立ち去った後だった。
ホッとすると同時に、鉛のような徒労感と疲労感が、尊の体に一気に押し寄せてくる。
「ねぇ、ねぇ、尊君。周防君っていつまで東京にいるの?彼女とかいるのかなぁ?」
「…彼女はいないよ。」
マナの質問に尊はグッタリとした表情で答え、心の中で『…俺と結婚はしてるけど。』と付け加えた。