最強の花嫁は最愛の花婿を守る為に牙を剥く




壱は教室を出た後、廊下で通話を続けていた。

公然と話せる内容ではなかったが、どうせ目の前を行き交う生徒達に広東語の会話は理解できまい。

壁に背を預け、電話の向こうで待機している仲間に言う。

「待たせたな。状況はどうだ。」

少々電波が悪いところにいるのか、応答には雑音が混じっていた。

『状況よし。準備万端、整っております。…実に静かなものです。ここは静かすぎて、どうにも落ち着きません、大哥。』

「じきに賑やかになる、それまでの辛抱だ。…周辺警戒を怠るな。警察だけじゃねぇ、民間人にも気取られないよう、地上の連中に監視を徹底させろ。」

すると、受話口から『フフッ。』という笑い声が返ってきた。

壱が顔をしかめて問い質す。

「何がおかしい?」

『いえ、こんな暗い場所でコソコソやってますと、何だかサプライズパーティーの準備でもしてるような気分になってしまって。』

それを聞いて、煙草を咥えようとしていた壱の口元にも思わず笑みが浮かんだ。

「まぁ、サプライズには違いねぇ。連中にはパキスタン製の特別なプレゼントまで用意してやったんだ。あとは、連中のリアクションがー…。」

そこで壱は言葉を止めて、腕時計を見た。

作戦実行の時が迫っていることを確認し、その顔から一切の表情が消える。

「…時間だ。」

壱は冷徹な声音で、神楽町地下トンネルに潜む同胞人民に告げた。

「状況を開始しろ。我々の脅威を示す重要な初戦だ、存分にやれ。」

『了解。状況を開始。不夜城は座して死を待つ。繰り返す。不夜城は座して死を待つ。』




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