最強の花嫁は最愛の花婿を守る為に牙を剥く
1日の講義が全て終わり、尊にとって人生の頂点になるかもしれない瞬間が迫っていた。
「今日、皆でカラオケ行こうぜ。」「うんうん!周防君も誘ってよ、尊君!」という悪友達のお誘いを丁重にお断りして、全速力で向かった中庭で待っていたのは、ベンチに座って読書に勤しむ伊藤純花だった。
彼女はただ本を読んでいるわけではない。
読書で時間を潰しながら、自分を待っているのだという事実が、尊の胸をますますときめかせる。
「おおお、お待たせしました、いいい、伊藤さん!」
尊が緊張気味に声を掛けると、純花が読んでいた本から目を上げた。
「全然待ってないよ。…ふふ、純花って呼んでって言ったのに。」
それから、ちょっと意地悪っぽく微笑んで「今日はタキシードじゃないんだ?」
「あああ、あれは…。」
「あの時はゴメンね、急だったからビックリしちゃって…。」
純花がバックに本をしまい、ベンチから立ち上がった。
身長は尊より少し低く、フワフワの髪と存在感のある胸が同時に揺れる。
「本当はね、あの後ずっと尊君に声を掛けたいなって思ってたの。でも、尊君、いつも沢山のお友達と一緒にいるから、なかなか勇気が出なくて…。」
この時、尊は決心した。
これまでにも何度か胸を過り、その度に先送りにしてきたことだったが、今度こそあの馬鹿共とは縁を切ろうと。
「そ、それじゃあ、どこに行こっか。伊藤さん、じゃなくて、純花さん。」
「私、尊君と一緒に行ってみたいカフェがあるんだけど…あ、でも、尊君は男の子だし、あんまりそういう場所は好きじゃないかな…?」
「そんなことないよ!めちゃくちゃ大好き!」
正確に言えば、今この瞬間めちゃくちゃ大好きになった。
2人で並んで歩き出す。
正門を出るまで注目の的だった。
そして、正門を出た後もその状況は変わらなかった。
純花の可憐な容姿は老若男女の視線をひきつけ、尊はそれを特等席で眺めながら夢見心地で言った。