最強の花嫁は最愛の花婿を守る為に牙を剥く
「当面、あの一帯は封鎖されるらしいよ。また崩落する危険があるから。ライフラインも全滅で、復旧もいつになるか分からないんだって。」
純花の情報に、尊の横顔が一層暗いものになる。
神楽町は志藤組の縄張りでもある。
ただでさえ商売が上手くいっていないところに、今回の大惨事。
今現在、父親がどんな形相をしているかは想像に難くない。
純花が伏せ目がちに言う。
「怖いよね。こんな近くで、こんな大きな事故が起こるなんて。…最近、ただでさえ物騒なのに。」
「物騒?」
「うん、何て言うのかな…。少し前から、この辺り柄の悪い人達が増えたように思わない?」
「………。」
そうだろうか。
来る日も来る日も学校とバイト先とオンボロアパートを行き来するだけの尊には、純花の感じているものがいまひとつ分からない。
しかし、男として言うべきことは分かった。
「だ、大丈夫!心配しないで!何があっても、純花さんのことは俺が守るから!」
「尊君…。」
尊の真っ直ぐな瞳に、純花が思わず頬を染める。
「ありがとう。尊君って男らしいんだね。」
次の瞬間、尊は左半身に柔らかなものを感じてギョッとした。
純花が大胆に腕を絡ませ、自身の最大のセールスポイントを惜しげもなく押し付けていた。
無論、尊にそれを断るような理由はなく。
「ままま、任せて!俺、純花さんの為なら命だって惜しくないから!」
そう言って、更に男らしい自分をアピールする為に力強く胸を叩く。
…その勇姿を『妻』に見られているとも知らずに。