恋はひと匙の魔法から
疑惑は晴れたが料理が絶不調な今、週末に会うことは避けたかった。
傷の治りに時間がかかるのは心も身体と同じらしい。心が立ち直ったように思えても、料理の質がすぐに元通りになる訳ではなかった。緩やかに、だんだんと復調していき、やがてまた、魔法が正しく作用するようになる。
経験則から基づくに、恐らく明後日の週末ではまだいつものように料理を振る舞うことはできないだろう。
透子の中で、西岡と会うことと料理を作ることは最早セットになっている。何かの拍子で料理を作れないことが露呈して落胆されてしまうと思うと心苦しい。
疑うかのようにこちらの顔色を探る双眸をやり過ごしていたところで、不意に思い至る。
明日は金曜日。いつもなら西岡に弁当を作って持って行くところだが、明日はそれもできない。それこそ何と言い訳をしたらいいだろう。
透子の顔がサッと青褪める。急にオロオロし出した透子を不審に思ったのか、西岡が顔を覗き込むようにして近づいた。
「どうした?」
「あ、えっと……明日お弁当作れなくて……」
「ん?弁当?」
突然の話題の転換についていけない様子で西岡は目を瞬かせる。口にしてしまってから、透子も脈絡のないことを言ってしまったと後悔した。
しかし突いて出た言葉を喉元へ戻すこともできず、かといって上手く口も回らず、透子はあわあわと唇を戦慄かせる。
「弁当は、別にいいんだけど……何かあった?」
その問いに透子の心臓がひっくり返りそうになった。
何かはあった。ただそれを正直に打ち明けるのは憚られる。
誤魔化すために他の理由をでっち上げようとあれこれ考えを巡らすも、動揺しているせいもあって上手く頭が働かない。
「あ、えっと……あの、その……怪我を……」
ようやく思いついた陳腐な言い訳をとりあえず口にしてみた。
が、それを耳にした西岡が眉を跳ね上げ、透子の右手首を勢いよく掴んだ。西岡は自分の眼前に透子の手のひらがくるように持ち上げ、そのままじっくりと検分をし出す。
透子は己の背筋に冷や汗が伝うのを感じた。
傷の治りに時間がかかるのは心も身体と同じらしい。心が立ち直ったように思えても、料理の質がすぐに元通りになる訳ではなかった。緩やかに、だんだんと復調していき、やがてまた、魔法が正しく作用するようになる。
経験則から基づくに、恐らく明後日の週末ではまだいつものように料理を振る舞うことはできないだろう。
透子の中で、西岡と会うことと料理を作ることは最早セットになっている。何かの拍子で料理を作れないことが露呈して落胆されてしまうと思うと心苦しい。
疑うかのようにこちらの顔色を探る双眸をやり過ごしていたところで、不意に思い至る。
明日は金曜日。いつもなら西岡に弁当を作って持って行くところだが、明日はそれもできない。それこそ何と言い訳をしたらいいだろう。
透子の顔がサッと青褪める。急にオロオロし出した透子を不審に思ったのか、西岡が顔を覗き込むようにして近づいた。
「どうした?」
「あ、えっと……明日お弁当作れなくて……」
「ん?弁当?」
突然の話題の転換についていけない様子で西岡は目を瞬かせる。口にしてしまってから、透子も脈絡のないことを言ってしまったと後悔した。
しかし突いて出た言葉を喉元へ戻すこともできず、かといって上手く口も回らず、透子はあわあわと唇を戦慄かせる。
「弁当は、別にいいんだけど……何かあった?」
その問いに透子の心臓がひっくり返りそうになった。
何かはあった。ただそれを正直に打ち明けるのは憚られる。
誤魔化すために他の理由をでっち上げようとあれこれ考えを巡らすも、動揺しているせいもあって上手く頭が働かない。
「あ、えっと……あの、その……怪我を……」
ようやく思いついた陳腐な言い訳をとりあえず口にしてみた。
が、それを耳にした西岡が眉を跳ね上げ、透子の右手首を勢いよく掴んだ。西岡は自分の眼前に透子の手のひらがくるように持ち上げ、そのままじっくりと検分をし出す。
透子は己の背筋に冷や汗が伝うのを感じた。