恋はひと匙の魔法から

まさかのお願い

 透子には不思議な力がある。それは三浦家で代々女性に受け継がれているものらしく、祖母はこの力を『魔法』と呼んでいた。
 魔法というと、空を飛んだり、何もないところから物を取り出したり、火や水を自在に操ったりと、アニメや小説で出てくるような超能力が思い浮かぶが、透子のそれはそんな華々しいものではない。
 どんな料理でも美味しく作れる――これが透子の使える唯一の魔法だった。
 
 五歳の頃、祖母と一緒に初めておにぎりを作った時にそのことを教えられた。

『あなたが塩を入れ過ぎようと、塩と砂糖を間違えようと、これを食べた人は美味しく感じちゃうの。不思議よねぇ。だからこそ、透子はしっかり料理をお勉強しなきゃいけないのよ』

 幼い透子は大好きな祖母の言葉に素直に頷き、少しずつ祖母から料理の手ほどきを受けたのだった。
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