鬼上司に恋しました〜本当の、恋を教えてくれたのはあなたです
「ほんと、迷惑かけられてたんだから、頑張りなさいよ」
一番、苦手だった小野田さんからの激励に、胸が熱くなる。
「ご迷惑をおかけしたお詫びです」
有名なお店のお菓子の詰め合わせを渡した。
「あら、気遣いもできるようになったのね。進歩したじゃない」
ありがとうございます。これも…課長、いえ、千紘さんのおかげです。
「はい、いろいろと教えてくださいましたから」
チラリと千紘さんを見ると、目が合い、怖い顔を真っ赤にさせて咳き込みだした。
それ以上、言うなと誤魔化しているらしいが、私の本気はこれからですよ。
心を入れ替えた私は、積極的に仕事に取り掛かる。皆が、呆気にとられるほどの変わりようで。
お昼のチャイムがなり、お弁当を持って真っ先に課長のデスクに駆け寄った。
「課長、お弁当作ってきたんです。一緒に食べましょう」
いつも食堂で食べる千紘さんを捕まえて、課長の前でお弁当を広げていく。
「えっ、どういうこと?」
小野田さんが、不思議に思ったらしく声に出してくる。
「私、課長のこと好きになったんです。だから、課長のこと好きにならないでくださいね」
主任に気がありそうな如月さんと、高木さんといい雰囲気だった小野田さんに、一応だが、牽制。
「いや、ありえないだろ」
高木さんが、失礼なことを言うのでムカッときて言い返した。
「怖い顔してますが、優しい人です。課長のいいところを知ったら、みんな好きになっちゃいます。頑張って私を好きになってもらうんで邪魔しないでください」
「えっ、主任は?…なんで課長?何したんですか?」
訳がわからない様子で、課長を皆が見ていた。
いたたまれない課長は、顔を真っ赤にさせて嘆いていた。
「うるさい。俺も戸惑ってるだよ」
「私、諦めませんからね。歳が離れてるとか気にしません。それを言い訳にして断らないでくださいね」
「会社に出てきたのって、課長目当て?」
「そうです。もちろん、課長に嫌われたくないので仕事も一生懸命しますよ。小野田先輩は、好きな人の側にいたくないんですか?」
「…いたいわよ」
「そういうことです。だから、仕事も頑張って、今までの私じゃないって証明してみせるんです。そしたら、付き合ってくれるって約束してくれたんです」
お弁当のおかずを勝手に摘んで、喉に詰まらせた千紘さんは、ぐほっと咳き込んだ。
みんなの視線が物言いたげに、千紘さんにむく。
「中村、ニュアンスが変わってる。頼む、誤解を生む発言はやめてくれ」
「えー、課長、頑張ってたら、付き合ってもいいって」
「考えると言っただけだ」
あれ…覚えてましたか。
流されてくれず、作戦失敗です。
大小路主任の時と違う私の勢いに、皆が、私が鬼束課長に本気だと生暖かい目で見守られていた。
その日の帰り、最後まで残る課長の机の前まで行く。
「夕食作って待ってます」
「…作ってくれるのは嬉しいが、付き合ってもいない男を、そう頻繁に家にあげるもんじゃない」
「千紘さん、半年猶予をくれましたよ。だから、好きになってもらえる努力をしたいんです。ダメですか?」
「…わかった。買い物して帰るんだろ。荷物ぐらい持ってやる」