やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 生まれた時から身体が弱かったモニカにより良い治療を、と前伯爵は国内に止まらず、国外にもその手を伸ばした。
 その医療費が、元々豊かではなかった伯爵家の経済状況を圧迫していた。
 隣国で前伯爵ご夫妻が事故に遭ったのも、高名な医師にモニカを診察して貰っての、帰国途上中のことだった。
 一人娘の治療費で家の財産は減ったのだとは言えなくて、両親はモニカに経済状況を伝えなかった。

 母を溺愛していたムーアの祖父が見かねて、クレイトン産の果物を経営していた『シーズンズ』各店や、ホテル、百貨店との取引を始めてくれて、領地経営は徐々に上向きになってきた矢先の、今回のモニカの乱だ。
 彼女にキレた母と祖父がこれからの取引停止を求めたのは当然のことだ。


 モニカは領地経営のこと等、何もわかっていない。
 シドニーを始め、エドワーズ侯爵閣下はこんなクレイトンの内情を知っていたのだろうか。


 父本人はそういう人なので、全く気にしていなかったと思うのだけれど。
 妻の実家が援助していることで、領民から父が侮られるのを心配した母から頼まれて、祖父はムーアと分からぬ様に間を入れて契約をしていた、と聞くし。

 もし、そのことを調べ上げられていないのだとしたら、侯爵家の調査能力はポンコツ過ぎて、笑うしかない。

 まさしく、貧乏くじを引いた、だ。
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