やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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 いくら祖父から私を見張れと命じられていたとしても、それはずっとではないだろう。
 あの夜に繁華街で会うなんて、偶然なんてあり得ない。
 いつから、どこから、フィリップスさんは私の跡をつけていたのだろう?


 一昨日の夜、フィリップスさんと出会ったのは、私の人生で決まっていたことだとオルから聞いた。
 どんな形であれ、出会うひとだと。


「一昨日はたまたま会った、とは仰いませんよね?
 いつから、跡をつけていらっしゃったんですか?」

「……実はムーア氏から頼まれていたのは貴女ではなく、モニカ・キャンベルについての調査なんです」

「祖父がモニカを調べていたのですか?」

「クレイトン領内で流れていた不穏な噂です。
 ムーアの名前は出していませんが、関係者は何人か領内に潜ませています。
 その者達からの報告で……」


 不穏な噂、それは後継者であるはずのモニカの権利を奪われている、だの。
 使用人のようにこき使われている、だの。
 下らない内容の噂。
 忙しい祖父が気にするようなレベルではない、と思う。


 フィリップスさんは忌々しげに口にした。
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