やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 唯一の得意料理を、食い気味に好きだと答えてくれたオルの声の様子が違っていて、私は隣に立つ彼を見上げた。


 驚いた。
 オルの瞳に、涙が見えた気がしたから。


 ◇◇◇


 食事が終わり、食器を洗うと申し出てくれたオルに、私は断った。
 洗い物なんか、貴方が居なくなった後、するから。
 やることが何もなくて泣くより、食器を洗う。


「昨夜の話、途中で止めてごめんなさい。
 続きを聞かせてくれる?
 オルもさっき見たでしょう?
 シドニーは私に2度と話しかけるな、と言っていたわ。
 それなのに、悪縁が続くのはどうしてなのか」


 それは本当に聞きたい。
 シドニーは、自分が1度口にしたことは決して曲げない。
 私には、それが信念を持つ男性に見えた。


「……」

 オルはなかなか話そうとしない。
 自分がその悪縁を絶ちに行く、と決めたから?
 もう、話す必要はない?
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