やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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 自分より年下の。
 おそらく12か13歳の。  
 そんな子供相手に、おとなげないと言いたければ言え。


 領主の娘に面と向かって『嘘つき』と罵ったこの少年は、聖女のためなら不敬だって思っていない。
 彼等信者が幼いリアンに心無いちょっかいをかける。
 彼等信者が集まって、3年後にあんなことを仕出かす。
 

 今からこの少年の信仰を止められるとも思わないし、止めようとも思わない。
 私がするのは、信者を潰すだけ……

 小憎たらしい少年は下唇を噛んで、私を睨んでいる。
 自分でもここまで言うか、と思うけれど。
 もしかして3年後にリアンを突き飛ばしたのは、この少年の手かもしれないのだ。

 私はリアンを傷付けた奴等は絶対に許さない。



「車を買ったら、皆あの御者さんにお願いして乗せて貰うといいよ。
 私のお父さんは優しいから、嫌だと絶対に言わないからね。
 来年だよ、それまで楽しみに待っててね。
 それから君は馬車でさえ贅沢だと言うんだから車には無理して乗らなくてもいいよ」
 

 車と聞いて、子供達の興奮は最高潮だ。
 私に噛みついた少年を除いて。
 もう一人の信者少年も目の輝きがさっきと変わった。


 二頭立て馬車でさえ、贅沢だ、とこの少年は言った。
 その馬車で領内を移動していた領主夫妻を、どんな風に見ていたかはこれで分かった。


 実際に車を主に乗っていたのはモニカだ。
 馬車の振動で気分が悪くなる、と言ってたんだっけ。

 モニカとお出掛けが重なると、両親は車をモニカに譲っていた。
 だから彼女に接することが多かった専属運転手は雇い主よりもモニカの方に肩入れしたのだ。

 馬鹿馬鹿しい、本当に腹が立つ程、馬鹿馬鹿しい……!
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