やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 例え、慣れた道であっても。
 揺れる馬車の中では、あれこれ考えこむものではないことを実感した。



 最悪の気分のままノックスヒルへ戻った。
 私達の帰りを待ってくださっていたレディモリッツに挨拶をする。


『どうしたの? お顔の色が悪いわ』

 授業は厳しいが優しいモリッツ先生が、私の顔色を心配してくれる。


『久し振りに馬車に揺られて、少し気分が……』

 ヒューゲルト帝国語で会話する私とモリッツ先生に、両親とリアンが加わって、王都を走るキャブやオムニバスについて、会話に花を咲かせていると、側をモニカが軽く頭を下げて通りすぎて行った。  


 ◇◇◇


 久し振りに可愛い弟のフロリアン、まだ11歳になる前のリアンに会えてとても嬉しかった。
 突き飛ばされて意識不明になった14歳の貴方に会いに行かなくてごめんなさい。
 それが元で、貴方は車椅子生活を送ることになる。

 好きな絵の道に進めて大きな賞もいただいたのに、心ない言葉に傷付いて、24歳の貴方はお酒に逃げてしまうのね。


「ちょっと帰ってくるの、早すぎるよ」

 リアンのからかうような憎まれ口に、私は誓った。


 もう『車椅子の画家』なんて呼ばせない。
 全てをやり直す今回は。
 リアンは『美し過ぎる天才画家』!
 必ず、そう呼ばせてみせる!
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