やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
……そうだった、この頃は、シーズンズやクリスタルホテルに納品していたし、百貨店のフルーツ売場に並んでいたんだ。


 憎い、と思っていた。
 両親とリアンは襲われた。
 領地も領民も、クレイトンの全てが嫌になった。
 取引停止は当たり前だ、と。


 だけど……この懐かしい木箱を見ると、息をするのも苦しくて。
 寂しい気持ちで胸はいっぱいになった。


 領民全員が、モニカを求めていた訳じゃない。
 教会で囲まれた時、両親に協力していた彼等も止めようとして混乱したのだとフィリップスさんは言っていた。

 そんな現伯爵派も巻き込んで苦しめた取引の停止だっただろう。
 嫡男の身体を不自由にした領地を、あののほほんとした父が見限った……


 今回のやり直しで、彼等との関係は改善されるのだろうか?
 今度こそ、私はクレイトンのために動くことが出来るだろうか?


 私に気付いた厨房の方が軽く会釈をされたので背を向けていた配達してきた男性がこちらを振り返った。



 粗末な服装をしたシドニー・ハイパーだった。



 私も驚いたが、彼はそれ以上だったのだろう。
 青い瞳が見開かれて。
 今回の、周囲のもの全てを小馬鹿にしていた暴君王子の仮面が外れた瞬間だった。

 シドニーは食堂の時の私と同様に、慌てて顔を背けた。
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