やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 その日は生ケーキのショーケースと焼き菓子を並べたコーナー、厨房内で2つに分かれている生場、焼き場、との往復を何度も何度も繰り返した。


 退勤時間の17時が近付いた頃、ずっと奥のオフィスに居たベイカーさんが現れた。


「初日、ご苦労様でした。
 ご想像されていたより、きつかったでしょう?」

「お疲れ様です。
 大丈夫です、来週もよろしくお願いいたします」

「こちらこそ、よろしくお願いしますね、キャンベルさん」


 ここではキャンベルと呼んでください、と皆さんにもお願いをしていた。


「後は配送が来ているので、厨房の者と一緒に受け取りをして、注文書と納品数を付き合わせて、合っていたらサインをしてください。
 運び入れるのは厨房の彼に任せればいいので、キャンベルさんはサインだけでいいですよ。
 そのまま退勤してください」


 ベイカーさんには大丈夫だと答えたけれど。
 足が痛くてたまらなかった。
 張り切ってお洒落な靴を履いてきてしまった。
 来週からはもっと楽な靴を履かなくっちゃ……


 売場の皆さんにも退勤の挨拶をして、厨房の裏口へ回った。
 既に、厨房担当者が荷馬車で配達されてきたフルーツを確認していた。
 それは見覚えのある木箱だった。
 クレイトン名産の果物が詰まっていて、伯爵家の紋章が焼き印されている。
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