やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 立ち直ったのは、私が先だった。


「ご苦労様です。
 納品確認します」


 注文書を受け取って、数量が合っているかの確認をする。
 問題がなかったので受領欄にサインをして、頭を下げて更衣室に急いだ。


 シドニーは無言だった。


 私も動揺が顔に出ていただろうか。
 サインする手が震えた様な気がする。
 いくら経済的に問題があっても。
 侯爵令息のシドニーが?
 今回は何かあって?

 それとも前回も彼は、隠れて働いていたの?
 もし、そうならクレイトンの果物がシーズンズに納品されていることを知っていたはずだ。
 自分が配達していたのだから。


 それに少しでも彼の気を引きたくて、私は母がムーアの出身だと話した。
 クレイトンへ避暑に来ていた夏、シーズンズの話題も何度か出ていた、と思う。


 自分がモニカを選んで、侯爵家が対立姿勢を示せば、ムーアとの取引がどうなるか位、分かっていたはずだ。
 それなのに、それを父親には教えなかった。


 私の気付かない何かが、彼がモニカを選んだ理由にあったのだろうか?

 あれ程しつこく話を聞いて欲しい、と言っていたのは、私に惚れられていると自惚れていただけじゃなくて?
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