やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 ムーアの代わりに契約者になっている商会に雇われているのだろう、と祖父はこれから詳しく調べてみる、と言ってくれた。
 エドワーズ侯爵家の事情が分かるまでは、その商会にシドニーのことを話して解雇して貰うつもりはない、とも言う。
 

 その口振りから、祖父の中でマイナスしかなかったシドニー・ハイパーの株が少しだけ上がったような気がした。
 祖父は勤労する青年が好きなのだ。


 だけど前回の彼は、結婚してから話が違う、とモニカを冷遇したと聞いた。
 使用人達からも離して、ひとりぼっちにさせた最低最悪な男だ。
 今回もどんな企みを持っているのか分からないシドニーに、気を許すことは出来ない。


 ◇◇◇


 2度目の9月第3週が始まった。

 土曜日にシドニーが配達している姿を見てしまっていたから、週明け早々に口止めに来るか、と思っていたが。
 彼は来なかった。
 いつもの如く、周囲に臣下を侍らせているその姿は、勤労青年には見えない。
 高位貴族の、誇り高い令息そのもの。


 受領書にはキャンベルとサインしたから、彼の方は私だと認識しているはずなのに、口止めをしてこないのは。
 あれを無かったことにするつもりなんだろう。


 あれは良く似た男性で、決してシドニー・ハイパー・エドワーズではない、と。
 下手に動いて、私に弱味を握られたくない、と思われる。
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