やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「モニカのお部屋は亡くなった彼女の母の前伯爵夫人のお部屋なので、高価だったり、凝っていたり、扱いの難しい物が多くて。
 こちらのエマはその点、扱いが慎重なので、母もモニカも安心して清掃管理を任せていられるのです。
 そのお話?」

「……」

 モニカに尋ねたが、返事はない。
 どんな匂わせ方をしていたのか知らないが、ハント嬢以外は、私の言葉に明らかに動揺している。
 ひとり澄ました顔でお茶を飲んでいる、この方は……


 一言も話さないモニカの様子に母は早く立ち去った方がいい、と判断したのか、エマにケーキを持ってくるように命じた。



「まぁ、クレイトン伯爵夫人自ら、ケーキを?」

「そうなんです! 母の実家の関係で、母も良くお菓子を作るのです。
 モニカはその弟子第1号と言うのでしょうか。
 ふたりでよくキッチンにこもって、あれこれ作っているんです」

「奥様のご実家は、確かあのシーズンズでは?」

「ご存じでしたの?」

「モニカ様が仰ったのではないのですが、父からそう聞きました」


 もうこの場の会話のイニシアチブを取っているのは、ハント嬢だった。
 私が話しやすい様に、会話を振ってくださる。

 そうだ、思い出した、この方だった。
 私に、父は中継ぎなのか、と質問してこられたのは。
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