やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 ハント嬢は私にではなく、母に視線を合わせて挨拶をされていた。
 つまり、モニカは皆様の名前も含めてきちんと母に紹介をしていなかった、と言うことだ。
 それだけで、モニカが母のことを侮っているのが分かる。



 私が合図したので、エマが2脚の椅子を追加で並べて、ティーカップも用意してくれた。
 それをチラッと見たモニカは、瞬間嫌そうな顔をしたが直ぐに普通に戻った。


「皆様、今はどのような話題で盛り上がっていらっしゃったの?」

 本来ならホステスとして話題を振らなくてはならないモニカが黙っているのをいいことに、私が進めたい方向へ話を振った。
 すかさず、ハント嬢が答えてくれる。


「お掃除はこうすればいい、とモニカ様が教えてくださっていました」

「お掃除の仕方、ですか?
 モニカが?」

 私がわざと驚いて確認するように、母とエマを見つめると、母達は困惑したような様子を見せた。
 当たり前の反応だ、モニカは掃除なんてしたことが無い。
 モニカの世話を主に担当しているのがエマだ。


「エマ、貴女のお掃除の仕方が素晴らしい、とモニカが皆様に褒めてくださっていたみたい。
 良かったわね?」


 ご令嬢のおひとりが何か言いかけて、口をつぐんだ。
 ハント嬢が彼女の手に素早く触れて、余計なことは言うな、と制したように見えた。
 それで私は続けた。
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