やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「奥様のご実家、ですね。
 それはムーアの労働力になるだけではありませんの?」

「生意気を申し上げますが。
 ムーアを見くびらないでくださいませ。
 彼等の人生を搾取しなくてはいけない程、落ちぶれてはいません」


 サーラさんはムーアのことをご存じだったが、少し考え込んでいた。


「自分の人生は自分で責任を取るしかない、と私は思っていますが、現状の彼等には、その選択肢はないように見えました。
 母には『先方が賛成してくださるなら』と言われました。
 子供達の現状を一番把握されているのは、神父様ではなく貴女方です。
 サーラさんが反対されるなら、諦めます。
 お返事はいつまでも待ちます。
 お世話役の他の方達とも、ご相談の上お返事をいただけたら、と思います」


 夕食の準備もあるだろうし、サーラさんを延々と説得するのはやめた。
 偉そうに言ったが、私も子供達のことだけを思って提案したんじゃない。


 モニカの友人が来たことをあんなに喜んでいた母。
 ご令嬢を集めてお菓子を一緒に作れる、とうきうきしていた母。
 クレイトンには王都育ちの母が楽しめるものなんて無い。

 ノックスヒルに子供達がやって来るのは、母の楽しみになるはずだ。
 彼等とリアンが顔馴染みになれば、3年後の悲劇は避けられるかもしれない。
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