やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 誰に間違ってこんな珍しい名前を付けられた? 


「赤ん坊の時、ここの前に置かれてて、一緒に手紙が入ってて、オシアナスをお願いします、だって」

「オルシアナス、じゃなくて。
 オシアナス、だったの?」

「今ここには居ないけど、俺の名前を届ける書類を書いた神父様が間違えて『ル』を入れてしまって、受理されてから気が付いたけど、まぁいいか、だよ」


 名前を間違ったくせに、まぁいいか?
 私はカッとなったのに、オルは淡々と話している。
 そうだった、辛い話程、このひとは淡々と話すのだ。


「オシアナスって、外国の神話に出てくる海の神様の名前なんだよ。
 だから、烏滸がましい、却って良かった、って」

「……」


 名前も間違えたうえに、正もせずに、烏滸がましい?
 そいつこそ、聖職者を名乗るのは烏滸がましい!


「18になったら、成人前でも改名出来るよね?
 全然違う普通の名前に変えるのも良いかな、と思ってる。
 おねーさん、どう思う?」

「……わたしの弟はフロリアン、っていうの。
 この名前も、この国では変わっているでしょう?
 違う国の男性に多いんだけど、よくからかわれてた」

「……」

「その国に両親が旅行に行って、素敵な名前だね、次に男の子が出来たらつけたいねって、つけられた名前なの」
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