やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「ジェリーさぁ、オルに何かしたの?
 あの日からあいつの様子変わってさ」

「な、何も無かったよ!」

 首筋に噛みつかれたのを誰かに見られた?
 でも、私が噛みついたのなら犯罪だけれど、私が噛みつかれただけで……


「顔なんか変わってないのにさぁ、鬱陶しい前髪あげてさ、姿勢良くなってさぁ、そしたらいきなり女共が騒ぐようになってさ、バカじゃねぇ?」

「……あの子、元は良いから」

 焦りで口元がひきつる。
 女共が騒ぐ? 駄目だ駄目だ、私のオルだぞ。
 私の呪いが発動してしまうぞ。
 慌てて周りを見渡した。

 私のオルはどこ?


「あいつ、もうここを出ていったよ。
 あれから急に魔法判定受けてさ、ものすごく魔力がある、って、そのまま。
 魔法学院に最年少で入学だって」


 茫然自失とはこのことだ。
 確かに帰る前に父に、孤児院に居るオルシアナスくんの魔法判定を申し込んでください、とは頼んで帰った。
 けれど、普通は申し込んでも、3ヶ月から半年は待たされるのだ。
 頼んでその月中に判定受けて、そのまま入学!

 あり得ない、あり得ない。
 やっと会えたのに、あの日だけ?


 のほほんとしているだけ、と思っていた父の意外な実力を、私はまだ知らなかった。


「それとさぁ、クララの兄ちゃん来てるぞ。
 あいつ、ジェリーの男かよ?」
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