やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
「……俺はその時、君にプロポーズをした?」

「安心してください。
 言葉通り、ただの御礼なんですよ。
 私達は付き合ってもいませんでしたし……
 だから、貴方がモニカを選んでも、私には何も言う権利もなかった」


 その8年後に、昔も今も好きだの言われることは黙っていた。
 それは私の記憶にはない。
 私は19歳の私が知っていたシドニーの話をするだけ。


 デイビス家が元サマセット子爵だったことは、祖父なら調べているだろう。
 だけど、サイモンが今まで誰にも見せなかった、私も渡されたことを誰にも言わなかった紋章入りのリングの存在など知らないはずだ。

 あの夜のサイモンと私しか、知らない。
 だからこそ、証になると思った。



「……さ、3年後、俺は君じゃなくて、あの女と婚約を?」

 まだ、そこに拘ってるのね。
 別に気にしなくていいのに。
 交際していた私を裏切った訳じゃないし、私の家族を守ろうとしてくれたんだから。



「夏祭りの夜に花火をふたりで見たりしたから、変な気分になっただけですよ。
 本当に気にしなくていいです、私も好きなひとが出来ました」

「好きなひと?」

「運命のひとです、わたしは彼と絶対に結ばれる」


 それを聞いたサイモンが少し馬鹿にしたように嗤った。
 元々このひとは、運命だの真実の愛だの、そんなのは信じないと口にするひとだった。
 
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