やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

37

 現れたクリフォード夫妻に懸命に、母から命じられたとモニカは訴えるが、彼等は何とも返事をしなかったので、モニカは余計に興奮してきた。


「貴方達も知ってたの!」

「左様でございます。
 ご夕食前に奥様から」

「叔父様が居ないのよ?
 このひとの言うことを聞くつもり?」

「旦那様がお留守の時は、奥様がノックスヒルの主でございますから」


 私はその場に居なかったが、母がクリフォードを呼んで、モニカに部屋を移って貰うと告げた時。
 彼はただ、『畏まりました』と言ったそうだ。


「……いいわよ、それならそれで。
 でも、私は叔父様から出ていけと言われるまで、あの部屋に居るから」


 モニカは泣かなかった。
 涙を見せても、庇ってくれる人が居ないからだ。 
 明日になれば、私は帰り、入れ違いで父は戻ってくる。
 父なら、泣けば自分の言うことを聞く、と思っているのだろう。
 だが、母さえこれを通してくれるなら、父はモニカではなく母を選ぶ。


 立ち上がって、ナプキンをテーブルに叩き付け、わざとゆっくりダイニングルームを出ていくモニカは、健気なヒロインには程遠い。
 その後ろ姿を見送って、母が私を見た。


「あんな、あの子初めて……
 今までずっと隠して……やはり私から話すわ」
< 322 / 444 >

この作品をシェア

pagetop