やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 今夜は祖父の邸で、旅行から戻ってきた祖母のお帰りなさい会があった。
 週明けにサイモンの誕生日があるのは、まだ祖父には教えていない。
 もちろん彼自身から伝わることはない。



「キャンベルって、すごくしゃべるのか、無口なのか、どっち?」

「……よく口が回る、とは言われました」

「それは、例の運命の魔法士?」

「……そうですが」

「なんか……変な気分なんだ。
 キャンベルのことは、何とも思っていないはずなのに、その男の話を聞くと失恋した気分になる」

「……そうですか」


 ……そうですか、としか、言えないし。
 サイモンだって、そうだろう。
 この黄昏と夕闇が混じり合った時間がいけないのだ。
 何となく寂しく感じて人恋しくなってしまう。


 もう、ふたりで荷馬車になんか乗らない方がいい。
 話題を変えよう。


「13年後について、何か聞きたいことがあるんですよね?」

 サイモンも話題が変わって、ホッとしたように見える。


「クララのことなんだ。
 まだ元気にしていたのかな?
 妹は……生き延びていた?」
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