やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 魔法士ってヤツは、御礼に何々してあげる、と言うのが定番なのかしら?
 そう思いながら、私は『3年先』の場所をヨエルに告げた。



 今ならまだ改修工事に入っていない3丁目の元倉庫。
 3年後には流行の最先端となるダンスホール。
『ニュージェネシス』。



 そこはセントラル大通りから少し外れたウエアハウス通り3丁目。

 空き倉庫等がポツポツとあるだけの寂れかけていた通りが、2年後にニュージェネシスがオープンしてから、注目のエリアに変貌するのだ。
 祖父には話さなかったが、この辺りでは倉庫だった建物をそのままに改修改装して、次々とお洒落な店舗が開店する。


 夕方からは人通りも途絶えていて。
 ここなら魔法が暴発しても被害は最小限に押さえられる。


 馬車が角の倉庫前に到着して、モニカを軽々と抱いてヨエルが降りた。
 彼女を任せるのは嫌だったが、私が抱けるわけでもなく。
 馬車の御者に料金を支払うのかと思えば、ヨエルは馬車もろとも御者を消してしまった。


 何て簡単に人の命を取り上げてしまうのか。
 消滅させた……神の領域に簡単に踏み込むんだ。
 黒魔法士は魔法士の誓いには縛られない、というわけね。
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