やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 綺麗な顔と優しい声のこの男は、確実に狂っている。
 どうして、私がここまで憎まれているのか、思い当たらない。
 しかし、このままではモニカも私に巻き込まれて、同じく埋められてしまうのは確実だ。



「ここでおしゃべりをするんでしたね?
 アレの師匠じゃない、という理由は分かりましたけれど。
 私がヨエルだとどうして?」

 くたっとしているモニカを、私に押し付けながらヨエルが尋ねた。
 意識がない人間の重さに尻餅をついてしまって、彼を見上げる形になるのが悔しい。


「貴方が名乗った『スピネル』は古語で、小さなトゲを意味します。
 そんな名前を付ける親はいません。
 貴方の瞳の色から来た呼び名だと思いました。
 その呼び名に、本物の師匠のファミリーネームを付けて名乗られたのでしょう?
 私にエドワーズ侯爵に協力した魔法士として本名を知られているから」

「……私の瞳が赤いから、スピネルだと?
 君は宝石の勉強もしていましたか。
 ムーアのじいさんは次は宝飾店でも開店させて、君にやらせるつもりだったのかな。
 無駄な準備でしたね」

「……」
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