やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない
 超魔法誓約的……
 この先も命をかけた『魔法士の誓い』は、誰かの都合次第で変更されていくのね。


 つい、皮肉な考えに囚われそうになったけれど気持ちを切り替える。
 23歳のオルとの時間は残り僅か。
 オルに伝えたいことを言おうとした。



「あの、トマトごめんね」

「トマト?」

「トマト煮込み大嫌いだって、食べられない、って」

「あっ、ああ、あいつが?
 そんなこと言ってた?何かの間違いじゃない?
 俺はチキンのトマト煮込みが世界で一番好きなのに」


 昔の自分のことなのに、他人事の様に言うオルが可笑しい。


「言ってたよ、ブラウンさんのところで昼食に出されたけれど、全然食べられなかった、ってビスケット食べてた」

「……君が出してくれたビスケット、食べたか」

 私が出したビスケット?
 違う、もうオルは食堂で食べてた……


「ねぇ、オル。
 やはり私達の初対面は、10歳の貴方が魔法判定を受ける前の10月なの?
 貴方のことだけじゃなくて、リアンの11歳の誕生日の贈り物はどうしたか、とか。
 あの10月が全然記憶に無いの。
 貴方、何かした?」


 何だか、おかしな感じにオルが慌て出したので。
 何か理由があって、オルが前回の私の記憶を消したのだと確信した。
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