やる気ゼロ令嬢と時戻しの魔法士*努力しても選ばれなかった私は今度こそ間違えない

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「貴方は私の首を噛んで、俺が吸血鬼ならどうする……」

「あっ、あーっ、あのガキ、やっぱり?
 やっぱり今回も、噛みついた?」


 オルが笑える程焦り出した。
 あのガキ、って本人なのに。


「頭のおかしなガキの戯言! あの頃俺は頭がおかしなチビで……
 もう! 忘れて!」

「オル、落ち着いて?」

「……分かったよ……全部話す。
 ……現実にうまく溶け込めないガキがさ、想像の世界に逃げ込んでいた、と言うか。
 当時の俺は色々……自分を置き換えて……
 あー、本当の俺は魔界の王子でまだ目覚めていないだけ、とか。
 それだから、魔力持ちの俺は親から捨てられた、って。
 違う世界から迎えが来るのを待つ主人公になったつもり……みたいな?」
 
「その中のひとつが吸血鬼だったの?」

「……もうさ、黒歴史!消したい過去だから、つい……」

「前回も私達は孤児院で出会ったけれど、その日の記憶を消したの?」

「……君は孤児院にモニカを迎えに来てて、リアンの誕生日のプレゼントを渡すために帰ってきた、と話していた。
 それでブラウンさんが連れて帰ってきた俺と会って、お腹空いてるなら食堂へ行こうよ、って誘ってくれたんだ」

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