沼甘総長は、左手の薬指を独占したい


「俺が君のこと、諦めると思った?」



私の耳に吹きかけられた、気持ち悪いくらい生ぬるい吐息。


ストーカーみたいな不気味声に、恐怖で後ろを振り向けない。



このチャラい声、バスで隣に座ってきたお兄さんだ。

間違いない。

どうしよう……

見つかっちゃったし……



お兄さんが、私の前に回り込んだ。



「俺と一緒に、遊園地の夏祭りを楽しんでくれるよね?」



彼の声に、私はうつむいたまま顔をブンブン振る。



「あ~あ。お兄さん、悲しくなちゃったなぁ~」


「……」


「全力で拒絶されたんだもん。君に抱きしめてもらわないと、立ち直れないんだけど」


「……」


「こんなに俺が構ってあげても無視って。はぁぁぁ~。もう優しさを振りまくの、限界だわ。そろそろブチギレてもいい?」

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