育児に奮闘していたら、イケメン整形外科医とのとろあま生活が始まりました
一般病棟や外来とは違い、暖房が効いていない場所は肌寒かった。
こんな場所での2人きりでの長居はしたくない。


「宇田先生。単刀直入に申し上げますと、俺はあなたと結婚するつもりはありません。なにか、勘違いをされているようで」

「……勘違い、と言いますと?」

「医院長は、俺と宇田先生を結婚させようと思っている。けれど俺には婚約者がいるので、あなたの気持ちには答えられません」


真っ直ぐに彼女のことを見つめ、正直な気持ちを伝える。まぁ、こんなことで引き下がってはくれないだろうが。

それでも、これ以上美優に余計なことを吹き込まれるより何倍もマシだ。


「婚約者……あの、なんの取柄もなさそうな女性でしょう?」

「取柄がない?」

「えぇ。現時点では、シングルマザーだそうですね。離婚歴があるのかまではわかりませんが、そんな方と山内先生がご結婚なさると?」


あぁ。この人はこういう人なのか。
こんなことを俺の前で言い放って、自分の価値を下げているということに気が付かないのだろうか。

美優のことを悪いように言っているが、俺の前での美優は違う。
何事にも熱心で、妃織ちゃん思いで。嫉妬する姿ですら愛おしい彼女が、なんの取柄もないわけがない。
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