ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。

幸せの在処



「ぱんださーーんっ!」

「星來!危ないから走っちゃダメ!」


 私たちは三人で動物園に来ている。
 日華さんが夕方から仕事の日があったので、その日のお昼に行くことになった。


「ぱんださんどこー?」

「パンダさんは並ばないといけないからね。おいで星來ちゃん」


 そう言って日華さんは星來を肩車してくれた。


「これなら星來ちゃんも見られると思うよ」

「ぱんださん!」

「す、すみません……重くないですか?」

「全然平気だよ」


 日華さんはやっぱり変装が上手く、今日は黒いキャップを被りメガネをかけていて、全くバレる様子はない。
 メガネは大学の時から時々かけていた。

「メガネかけるとより地味でしょ?」なんて言っていたけれど、私には違った知的な魅力を感じていつもドキドキしていた。

 やっぱりカッコいいなぁ……。


「ママ〜、ぱんださんもうすぐー?」

「あっ、そうだね。もうすぐかな?」


 いけない、いけない。
 顔には出さないようにしないと――。

 やがて私たちがパンダに会える番になった。


「星來ちゃん見える?」

「みえる!ぱんださんだぁ!」


 パンダはちょうどランチタイムのようで、笹の葉をムシャムシャ食べている。
 まんまるとした大きなぬいぐるみのようなフォルムがあまりにも愛らしい。

 もう1匹はタイヤを抱えてゴロゴロと遊んでいた。


「かわい〜〜!」


 初めて見る生のパンダに星來は大興奮だ。
 私も結構テンションが上がってしまっている。
 写真は私の仕事だから少しでも沢山撮らないと。


「かわいかったね、パンダさん」

「かわいかったぁ!」

「よかったね、星來」


 星來はとてもご機嫌だ。
 それからゾウやキリン、ライオンといった動物たちも見に行った。


「ぞうさん!」

「ゾウさん、お鼻が長いよ」

「ながいね〜」

「あっ星來、あっちにキリンさんいるよ!」

「きりんさん!」


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