ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。
水川くんはまだ若いし、突然こんなことを言われても困らせるだけなのはわかっていた。
とりあえず時間も時間だし、仕事に向かうことにした。
あかりが不安そうに俺を見つめる。
「日華さん、やっぱり……」
「大丈夫だよ」
あかりの額にキスを落とす。
「何も心配しなくていいから」
「っ、日華さん……」
「行ってくるね」
頬を真っ赤に染め、潤んだ瞳を向けて小さく「行ってらっしゃい」と言ってくれる彼女がかわいくて仕方ない。
こういう初心なところは昔から変わらない。
離れ難いと思いながら、車に乗り込んだ。
ソワソワしている風の水川くんに、追加の説明をする。数日前から訳あって親子ともども一緒に暮らしているということだ。
「表向きは住み込みのハウスキーパーなんだ」
「いやいや!なんでそれ先に言わないんですか!?」
「言ったら反対するでしょう?」
「そりゃあ……いや、ちょっと情報量多くてパンクします……」
大きく溜息を吐いてから、水川くんはバックミラー越しに俺を見る。
「率直に言いますね。日華さんを慕う一人の人間としては、嬉しいです。ずっと探していた大好きな人と再会できたんなら、こんなドラマみたいなことありませんよね」
「ありがとう」
「だけど、マネージャーとしての立場からは素直に喜べるとは言い難いです」