ミステリアスなイケメン俳優は秘密の妻と娘を一生離さない。


 水川くんは俺に配慮しながら、慎重に言葉を選んでくれている。その心遣いが伝わるだけで、充分嬉しかった。


「日華さんの年齢的に結婚がマイナスにはならないと思います。ただ、実は子どもがいたという事実をどう公表するか。
そこがなかなかに難しい点かと思います」

「やっぱりそうだよな……」

「加賀美さんと別れたのは3年前ですよね?その時に彼女は妊娠されてたんですか?」

「俺の前からいなくなった直後、妊娠が発覚したそうだ」


 この辺りのことは改めてあかりから話を聞いていた。
 俳優として売れ始めた俺のことを思い、尚且つ一般人の自分で良いのか悩むようになっていたこと。最後に思い出作りをし、俺の前から姿を消す決心をしたこと。
 それがあの夜だったそうだ。


「念のために確認しますけど、間違いなく日華さんの子なんですよね……?」

「そうだよ。あかりが嘘を言ってると思うのか?」

「いえ、念のためです!日華さんの実子だとしたら、何故妊娠した時に結婚しなかったのかとか色々言われるんじゃないかと思って」

「それはきちんと説明する」

「何を説明するんですか?加賀美さんのこと、包み隠さず世間に公表するんですか?
彼女は一般人ですよね?」

「っ、」


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