孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 社長にうるさがられつつも頼りにされているらしい男性秘書が、一瞬呆気に取られた顔をする。けれどすぐに「かしこまりました」とどこかに電話をかけ始めた。背中を向ける彼をぽかんと見やってから、私はおずおずと社長に目を戻す。

「こ、婚姻届って……」

「俺とおまえの名を書いて役所に出す。彼氏はいるんだろ? だったら家族になるしかない。それとも養子縁組にするか?」

 ごく真面目な顔で答えるその人を、信じられない気持ちで見返した。

「あなたはいったい、何を考えてるんですか?」

「俺は俺自身から解放される時間……つまり効率的に心身を回復させる手段が欲しいだけだ。どういうわけか、おまえは俺を、俺にもわからん道理で無防備にさせる。そんな相手はほかにいない」

 冷めた目に、ふいに肉食獣を思わせるような強さが宿り背筋がぞくりとした。ライオンに狙われた小動物の気持ちを想像しながら、私は口をぱくぱくさせることしかできない。

「だからって、結婚なんて」

「結婚なんてただの契約だ。形だけあればいいし、俺にこだわりはない。そもそも結婚する気もなかったしな」

「いやいや、これから素敵な女性と出会うかもしれないじゃないですか。あきらめたらもったいないですよ! そんなにかっこいいんだから」

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