孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 リサさんがくしゃっと表情を崩すのを見て、「でも」と言いかけた言葉をのみ込んだ。

 手伝いはしたくてしていたのだけど、今の状況ではかえって心配をかけてしまうらしい。

 職を失って貯えも大してないのに就職の目途も立たず、考えれば考えるほど不安になる状況の中、無心で料理をしたり掃除をしていたほうが気がまぎれる。だからといって、さすがに五日連続で顔を出すのは甘えすぎかもしれない。いろどり亭は私の実家ではないのだから。

「はい。じゃあ帰りますね」

「あ、これ持ってって。農家さんからいっぱいもらったから、おすそ分け」

 リサさんがビニール袋に入れてくれたのは扁円形の立派なキャベツだった。



 …



 店を出て坂道を上りきると、遠くの空がオレンジ色に染まっていた。沈んだ太陽の残照が上空の群青と混ざり合って滲んでいく。

 午後六時。こんなに早い時間に帰るのは久しぶりだ。

 工場の事務として働いていたときは残業で午後八時を過ぎることが多かったし、ここのところはハローワークで求人募集の検索をし、あるいは就職面接に赴き、夕方からはいろどり亭でピーク時間まで手伝うという毎日だった。

 木造の古いアパートに着くのはいつも午後九時過ぎ。

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