孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 帰るといつもバイトとバンド活動を終えた純也がテレビを見ながらソファに寝転がっているのだ。手早く食事の支度をして転寝している彼を起こし、純也が深夜のコンビニアルバイトに行くまでのささやかな空き時間に、ふたりで夕ご飯を食べる。それが私たちの日常。

 一歳年上の純也とは、いろどり亭で出会った。

 当時大学生だった彼がバンド仲間に連れられてはじめて訪れたあの店で私は声をかけられた。まあ、平たく言えばナンパだ。

 最初は相手にしなかったけれど、何度も通ってきては口説いてくるから、そのうち根負けする形で付き合うようになった。そんな始まりでも六年も続いているのだから、純也とは馬が合ったのだろう。

「結婚か……」

 脳裏をかすめるのは、ホテルの一室で冗談としか思えないことをまっすぐな目で口にしたホダカ・ホールディングスの社長だ。

 長年一緒にいる純也とだって結婚話は出たことがないのに、その日会ったばかりの相手に軽々しく提案する内容だろうか。いくら私がお金に困っているからといって、そんな話に食いつくと思われたことが腹立たしい。

「まったく」

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