孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 怒りがぶり返して足に力が入ったせいか、アパートの鉄骨階段がカンカンといつもより鋭い音を立てた。ソファで転寝してる純也が目を覚ますかもしれない。そうしたら、この話を聞いてもらおう。お金持ちの考えることがどれだけ突拍子がなくて浅ましいか、笑い飛ばしてスッキリしよう。

 日常の出来事を共有できる相手がいる。それだけで幸せを感じられるなんて、我ながらとても能天気な人間だと思う。大家族の長女として生まれたせいか、たくましく育ってしまった私は、幸か不幸か悩んだ状態を持続できない。

 さっきの今で少しだけ晴れた気持ちのまま部屋にカギを差し込み、扉を開く。安いアパートはドアの開閉音が一階まで響いてしまうため、できるだけ静かに扉を閉めた。

 1LDKの玄関で、最初に違和感を覚えたのは靴だった。乱雑に並んだ純也のスニーカーにまぎれてピンヒールのパンプスが置かれている。自分では選ばないようなワインレッドのクロコダイルデザインだ。

 あれ、こんな靴持ってたかな。

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