孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 言い訳しようのない姿を晒しているのに、彼氏はパンツを履きながら慌てて言う。

「ひ、ひかり。違うんだ」

「違う? なにが?」

 純也が面白いほど狼狽するせいか、私は驚くほど冷静だった。

「彼女がいないあいだに、別の女性と裸でベッドイン」

 確認するように、目の前で起こっている事実をただ口にすると、純也は自分が組み敷いていた女性に目を向けて首を振る。

「いや、だから、これには深いワケが」

「ワケ?」

「たまたま、気づいたらこうなったっていうか」

 言い逃れをしようとする姿に情けなさがつのる。かといって開き直られたら腹が立つのだろうけど。というか、どうして私はこんなに気持ちが冷めてるんだろう。

 浮気現場を見つけたら、もっと感情的になりそうなのに。

 赤い口紅の彼女は同じ歳くらいかもう少し上か、我関せずといった顔で淡々と衣服を身に着けている。まるでこういう修羅場に慣れているみたい。乱れた髪を整えると悪びれる様子もなくニッコリ微笑んだ。

「お邪魔みたいだから帰るね。ばいばい」

 なにごともなかったように私の横を通り過ぎ、玄関を出ていく。コツコツと甲高いヒールの音が遠ざかっていくまで、私と純也は一歩も動かなかった。

「……今のは、どちら様?」

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