孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「俺に出ていかれるとひかりだって困るだろ? 家賃を折半にしてるんだし。実家に仕送りできなくなったら弟たちがやばいって言ってたじゃん」

 そこではじめて頭に血がのぼった。

 古い木造アパートはボロボロだけど私が生活するには十分の広さがあるし、駅まで徒歩で行ける距離で高台にあるからベランダからの眺望は意外と悪くない。

 短大時代からひとりで住んでいたここに、純也が転がり込んできたのだ。本格的に一緒に住むようになってからは家賃を半分負担してくれて、そのおかげで実家にそれまで以上の仕送りができるようになった。

「今ひかり失業中だしさ、俺に出ていかれると困るだろ? もっと安いところに越すにしたって初期費用とか引越し代とか余計な金がかかるし」

 腹が立つけど純也の言う通りだった。安定した収入を得られない今、世間一般に比べたら安いボロアパートの家賃とはいえ出費は痛い。

「な。気持ち切り替えて夕飯にしようぜ。料理好きだろ」

 ビニール袋をもつ手が震える。『気持ち切り替えて』って、浮気した側が言うセリフだろうか。腹立たしさがこみ上げるのに、それ以上に浮気男に文句のひとつも言えない自分が情けなくて悔しい。

「つか何持って帰ってきたわけ? お、でっかいキャベツ! いいじゃん。俺ロールキャベツが食いたいな」

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