孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 私からビニール袋を取り上げて中身を確認すると、嬉しそうに笑って袋を差し出す。純也からビニールを受け取り、私は踵を返した。リビングに戻り、キッチンを素通りし、そのまま靴を履く。

「え、おい、ひかり?」

 戸惑ったような声を背中に聞きながら、そのまま玄関を出た。階段を下り、すっかり暗くなった通りをまっすぐ歩く。

 料理好きだろ?

 そう、料理は好きだ。食べた人の喜ぶ顔を想像しながら作る時間は楽しい。

 でも今、純也のために料理する気にはなれない。

 料理は愛情だなとつくづく思う。彼氏彼女の愛情だけじゃなくて親子愛とか友愛とか、いろどり亭のお客さんや見ず知らずの人にだって、喜んでもらいたいと純粋に思えるから包丁を握れるのだ。だからこそ嫌悪の対象にはとてもじゃないけど手間暇かけて自分の時間と労力を費やしたいとは思えない。

 右手の指にビニールが食い込む。ずっしりと重いキャベツ。このひと玉でどれだけ料理を作れるだろう。お肉と合わせればボリューム満点の主菜になるし、いろどりの良いおかずにもスープにもできるから、弟や妹たちのおなかも心も満たすことができる。

 さっき、本当はキャベツを純也に投げつけてやろうかと思ったけれど、弟たちの顔が思い浮かんでできなかった。

「はあ、われながら貧乏性だな」

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