孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 質問を返すと、深水さんは「ああ」と思い出したようにスーツのポケットに手を入れた。にこりと表情を崩しながら取り出したのは、手のひら大の紙片。

「遊佐さんにこちらをお届けに。ホテルにお忘れになったので」

 私の氏名が印字されたハローワークの求職カードだった。

「ああ……ありがとうございます」

 ほんの数時間前のことなのに、穂高社長とのやりとりが遠い日の出来事のように思える。

 およそこの世のものとは思えない完璧な容姿の敏腕社長に、私のアパートの部屋の何倍という広さがある豪華なスイートルーム。あまりにも現実離れした時間だった。それが今や目を背けたくなるような現実――つまりは恋愛問題と金銭問題にぶち当たって途方にくれている。

 昼と夜のギャップに思わず笑ってしまった。

「ご自宅までお送りしましょう」

 深水さんの視線が私の手もとに移る。むしったキャベツの葉が現実を突き付けてくるようでそっとビニール袋に戻した。私のそぶりを気にするでもなく、社長秘書は腕時計に目を落とす。

「いつまでもこんな場所にいては危険ですよ」

「いえ……平気です」

 純也がいる自宅には帰りたくない。私の無言になにかを察したのか、深水さんはあたりを見回す。

「では別の場所へ? ともかく送ります」

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