孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 深水さんは手配すると言ったけど費用を支払うとは口にしていない。でも、お詫びって言ってたし……。

 私の手持ちでは安宿に一泊することすら難しい。帰りの交通費がせいぜいだ。もし支払えって言われたら断って帰らなきゃ。というか、さっきから旅館のスタッフもほかの宿泊客も見当たらない。

 首を伸ばして深水さんが消えていった方を見ていると、背後から声がした。

「なんだ、気が変わったのか」

 はっとして振り向いた先に、細身のスーツをまとったスタイルのいい男性が立っていた。

 ぎょっとする私を無表情に見やり、その人は金色の高貴な椅子に躊躇いなくビジネスバッグを置きネクタイを緩める。

「どうして、あなたがここに」

 声を震わせる私を怪訝な顔で見下ろすと、ホダカ・ホールディングス社長、穂高壱弥は当然のように言った。

「どうしてもなにも、ここは俺の家だ」

「あ、社長。お戻りでしたか」

 奥から深水さんが歩いてくる。スーツの上にひらひらのエプロンを身に着けているけれど、もはや突っ込む余裕はなかった。かわりに穂高社長が口を開く。

「なんだその恰好」

「いえ、めずらしくお客様がいらっしゃったので、つい張り切ってしまいまして」

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