孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 女子大生みたいにエプロンを広げてキャピッと笑う社長秘書を冷えた目で見てから穂高社長は顎で私を差し示した。

「それより、きちんと説明してないだろ。固まってるぞ」

「ああ、遊佐さん!」

 口から魂が飛び出しかけている私を発見し、深水さんは私の目の前で正気を確かめるように手のひらを振った。



 …



「つまり、こちらは穂高社長のお宅なわけですね」

「さっきからそう言ってるだろう」

 テーブルの向こうで見目麗しい社長がふんと鼻を鳴らした。頬が引きつりそうになり笑顔でこらえる。深水さんが淹れてくれたほうじ茶をぐいっと飲み干し、私は立ち上がった。

「帰ります」

「どちらへ?」

 間髪をいれず深水さんが言う。その表情はさきほどと打って変わって真剣だ。

「行くところがないのでしょう。説明不足だったことは謝ります。ただ、お詫びで宿を手配するというのは嘘ではないのです」

「うちは宿屋じゃないがな」

「ここでしたら部屋が余ってますしセキュリティも万全です。社長はいますがペットかなにかだと思ってくだされば。不愛想ですが人に危害を加えたりはしません。心を開くまで時間がかかるうえに我儘で手もかかりますが、慣れれば可愛いものです」

「俺は猫か何かか」

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