孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 穂高社長は一階の洗面所を使っているらしい。でも彼の寝室自体は二階にあるから鉢合わせする可能性は捨てきれない。泊まることを決めたのは自分だけど、起き抜けの状態で顔を合わせるのは憚られる。隙のない彼の前に立つには、こちらも相応に準備をしないといけない気がした。

 普段から来客のために置いてあるのか、大理石の洗面化粧台にはホテル並みにアメニティがそろっていた。大きな鏡に映った自分の姿をまじまじと見る。

 昨日、自分の頭では処理しきれないほどいろんなことが起きたのに、顔には疲れが出ていなかった。泣いたせいか目は少し腫れぼったいけれど、不調はそれだけで肌の状態は良好だ。おまけに頭もスッキリしている。

 きっとよく眠れたおかげだろう。

 毎日夜の十一時に就寝し朝の六時に起きる生活をしていて睡眠は十分に取っていたつもりだけど、こんなふうにスッキリ起きられることは少ない。いつもとは睡眠の質が違う気がする。

 ベッドの寝心地が抜群だったおかげもある。ただ……それよりも、この家自体に漂う匂いというか空気というか、動物的な本能に訴えかけるなにかが作用しているような気がしてならない。どう考えても身の丈に合わない邸宅なのに、ここにいると気持ちが落ち着くのだ。どういうわけか。

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