孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
そういえば『遊佐ひかり』と紹介されていたなと思い至る。自分でも忘れていたけれど、私は今、戸籍上は『穂高ひかり』なのだ。
それからも続々と社員が出社してきたけれど、深水さんと一緒にいる私を気にする人はあまりいなかった。やがて週に一度行われるという朝礼が始まり、連絡事項が交わされた後、深水さんが挙手をする。
「最後に一点よろしいでしょうか、周知事項です。急ですが本日より社長のカバン持ちとしてインターン生を受け入れます。私の遠い親戚の遊佐ひかりさんです。皆さん、いろいろ教えてさしあげてください」
深水さんに促され、注がれる大勢の視線にドギマギしながらどうにか「よろしくお願いします」と頭を下げた。
社員の男性が司会をしている朝礼が締めくくられると、各々が席に着いたり外出の準備をしたり、静かだったフロアがにわかに活気づく。
「というか私、深水さんの遠い親戚だったんですね」
フロアから社長室に戻りながら隣を歩く社長秘書を見上げる。彼は正面を向いたまま笑みを崩さない。
「そうしておいた方が、余計な詮索をされませんので」
「なるほど」