孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「そうか? たしかに仕事はできるらしいがおまえの方が美人だろ」

「そうですよね、眼鏡でわかりづらいけど目鼻立ちがすごく整って……はい?」

 あまりにナチュラルに言うものだから聞き流してしまったけど、今ものすごいことを言われたのでは。

「ええと……」

 穂高社長は私の視線にかまわず、いつものつんと澄ました顔でスマホに目を落としている。まるでさっきの発言そのものがなかったかのようだ。

 え、聞き間違い?

 でも、すごくはっきりした声で『おまえの方が美人』と口にしたはず。だって耳に彼の声の余韻が残っている。

 思い返して心臓がバクバク鳴った。

 穂高社長はものすごく目が悪いのだろうか。そうでなければ好みが猛烈に偏っているとか。

 ソファでゆったりと脚を組む彼の後ろで、勝手に上昇する頬の熱をもてあましていると、ノックの音がして入り口ドアが開いた。

「お待たせしてすみません、穂高社長」

 現れたのはスーツ姿の男性だった。穂高壱弥ほどではないけれど百七十八センチはありそうな長身で、大きな目が印象的な甘いマスクの――。

 あっと思う。ジャケットのボタンホールに弁護士バッジを留めたその人を、私は見たことがある。

「相変わらずお忙しそうですね、神谷先生」

「いえいえ、貴方ほどではないですよ」

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