孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
つぶやいて、彼は私に目を落とした。
「ホテルでは悪かった。さすがに強引すぎた」
目を丸める私からそっと視線を外し、彼は続ける。
「おまえの毅然とした態度で、少し目が覚めた」
その言葉で思い出されるのは、スイートルームのソファを勢いよく立った自分だ。
――この話、お断りします!
「日々に忙殺されてるうちに、己の立場を見失いかけていた」
そう言うと、穂高壱弥はほんの少し寂し気に私を見下ろした。
「俺は特別な人間じゃない。おまえよりずっと弱い」
「え……」
言い残して社長室に向かっていく彼の後を追おうとしたところで、フロアにチャイムが鳴り響いた。
「ひかりさん。本日の業務は以上です。ご自宅までお送りしましょう」
背後から声を掛けられて振り向くと、深水さんが私を見下ろしている。腕時計に目を落とすと午後五時を指しているところだった。定時なのか、ちらほらと帰り支度をしている社員が目に入る。
「でも社長がまだ」
「先に帰宅するようにと」
先回りして言われて、口をつぐんだ。
「わかりました。でもひとりで帰れるので送迎はいりません」
「社長から仰せつかっていますので」