孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 ひとりで帰れないとでも思ったのだろうか。腑に落ちないでいると私の顔色を読んだ深水さんがにっこり微笑んで言葉をつづけた。

「ひかりさんに社長の生い立ちをお話しするようにと」







 今日何度も乗り降りをした社用車の、今度は後部座席に乗り込む。深水さんは私を運転席の後ろに座らせ、自身はその隣に乗り込んだ。

「あの人はこの後まだ予定が入ってるんですか?」

 毎日激務のようだから今日も帰りが遅いのだろうな、と思いつつ尋ねる。深水さんは予定表を見るでもなく、私に笑いかけた。

「社長はこの後取材が二件入っています。そのまま会食に行かれますのでお帰りは深夜を回るかと」

「そうですか」

 本当に忙しい人なんだな。

 今日一日だけでも普段見られない穂高壱弥をずいぶん目にすることができた。取引先とはあくまで対等で横柄になることもこびへつらうこともなく、社内では威厳がありつつも社員と絶妙な関係性を築いている。

 厳しさもあるけど、全体的には慕われているように見えた。それに会社に対して並々ならぬ思い入れがあるようにも感じられた。

 深水さんがあれこれ世話を焼きたがる理由が、なんとなくわかった気がする。

 仕事に真摯に向き合って、情熱を注いでいる背中。それを見たら、きっと支えたくなる。

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