孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
「いかがでしたか? 会社での社長の姿は」

「……少なくとも、嫌われてるようには見えませんでした」

 ふふっと笑みを深くして社長秘書は会社案内のパンフレットを取り出した。人材採用や営業取引で使うというそれには、見開きページに社長が大きく載っている。会社案内だというのに、掲載されている穂高社長はやっぱり無表情だ。

「笑うのが下手なお方でして」

 苦笑しながら深水さんは『沿革』のページを開く。

「こちらはホームページにも記載がありますが、ご覧になりましたか?」

「はい。一応転職活動で御社を志望していたので」

「そうですか」と笑う深水さんが長い指で示す箇所を見る。そこには穂高壱弥の今日にいたるまでの歴史が綴られている。

 日本最高峰の(みかど)大学を卒業後、世界的な名門投資銀行に就職。二十五歳で渡米し、アメリカの大学でMBAを取得したのが二十七歳のとき。そのまま帰国してホダカ・ホールディングスを設立。

「私と同じ人間とは思えないほど立派な経歴です」

「ふふ。私がお伝えするのは、こちらに書かれている以前の社長の身の上です」

 にっこり笑う社長秘書に、「はあ」と曖昧な返事をする。

 深水さんがこんなことを言い出したのは、きっと私が穂高壱弥に『あなたのことを知りたい』と訴えたからだ。

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