孤高のエリート社長は契約花嫁への愛が溢れて止まらない
 表情の乏しいつんとした顔を思い出して、つい笑ってしまう。

 見た目とは裏腹に本当に律儀な人だ。多忙を絵に描いたような生活をしているのに、私との小さな約束まで全力で果たそうとする。

 有言実行の精神。設立間もない会社を上場させた所以だろうか。

「こんなに華々しい経歴ってことは、由緒正しいお家柄だったり資産家だったり、教育環境に恵まれたお家で優雅に育ったんでしょう?」

 私とはきっと生まれた時から世界が違う。堂々としていて気品のある佇まいを思い出しながら口にすると、深水さんはいたずらっぽく微笑んだ。

「半分は正解ですが、半分は不正解です」

 走り出した車の振動が、社長秘書の笑顔を揺らす。

「これからお話する内容は、社長が誰にも話していない過去の話になります」

 常に微笑みを絶やさない社長秘書の顔から、ふいに笑みが消えた。対向車のヘッドライトに照らされた顔に浮かぶのは、見たことのない真剣な表情だ。

 急激に漂う緊張感に、固唾をのむ。

「穂高壱弥の父親は官僚出身の政治家です。ご存じでしょうか。連民党の代表を務めた御園健治(みその けんじ)という御人を」

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